【O-GPS1】アストロトレーサーを使った天体撮影方法 ~天体シリーズ~
天体シリーズ第4弾です。
これまでに何回かブログで紹介してきたペンタックスのGPSユニット、O-GPS1です。
今回、このO-GPS1の機能の一つである『アストロトレーサー』を使って天体写真を撮影する方法をまとめます。
O-GPS1
手のひらサイズ。ってもこれだけじゃ分からんか^^;
先に断りますが、実際にわたしが撮影した手順をまとめるだけのことで、万人に共通するものではありません。被写体の種類、撮影機材、撮影環境も違えば、設定の好みやこだわりも人それぞれです。ただ一つの例として、これだけの機材と環境があれば、ここまではできるという参考にしてもらえればと思います。
また、このO-GPS1や赤道義などの星を追尾する道具がなくても、標準レンズの焦点距離くらいなら星空は十分に写せます。今のカメラの高感度なら問題ありません。まあ機材よりも、星が見えるような光害の少ない環境にいるかどうかの方が重要でしょうが。基本の部分は共通しているので、そこも一緒になぞっていきます。


たったこれだけの装備で星を追尾してくれます。前回の記事にも書きましたが、アストロトレーサーはGPSから得られた位置情報(緯度経度)から星の動きを算出し、それに合わせてイメージセンサーを動かすことで星を追尾し、点像で撮影することができるというものです。センサーシフト方式による手ブレ補正機構をもつペンタックス機ならではの機能です。もうほんとナイスアイデア(^^) 天体望遠鏡を作っていたメーカーならではの発想です。
対応機種については、リコーのページをご覧ください。→O-GPS1『アストロトレーサー』
◎他に必要なもの
三脚
なるべく大きく頑丈なものを。特に望遠で星雲・星団を狙う場合、ブレは大敵。
レリーズ
安いものでいいのであると便利。シャッターを押しこむときのブレをなくせる。
双眼鏡
星を見つけるときのサポートに。低倍率(7~8倍程度)、明るいものがおすすめ。
レリーズと双眼鏡はサポートなので、なくても撮ることはできますが、星撮りを楽しむならあった方がいいです。待ち時間も長いので、その間に双眼鏡で星を眺めるのも楽しいです。
参考までに、わたしの手持ちを。
三脚:SLIK SC 703 DX 3段
雲台:Manfrotto ギア付きジュニア雲台410
レリーズ:ETSUMI 電子リモートスイッチ RM-L1-C1 キヤノン/ペンタックス用
双眼鏡:Nikon アクションEX 7X35
◎これもあるといい(^^)
ヘッドライト
暗い場所での作業に。両手が空くのはありがたい。
星座早見盤
雑誌の付録についてきた。覚えたてのころは役に立つ。
カイロ
冬の撮影には必須。手先を温めるためにもだが、レンズの曇り防止に。
だいたいこんなところでしょうか。必要なものがそろったら、星撮りに出かけましょう。
光害の少ないところにいけたらいいですね。光害マップというページがあるそうです。ご参考に。
撮りたい天体がある場合、その天体が見られる方角を調べておいて、その方角が開けている場所を探しましょう。また、真っ暗な時間帯に行き慣れていない場所へ行くのは、危険なこともあると思うので、昼間にロケーションしているのが理想的です。
精密キャリブレーション
ポイントについたら早速準備を始めます。アストロトレーサーを使うのに必要な儀式です(^^)
・カメラボディにO-GPS1を取り付けた状態で、それぞれの電源を入れます。
・撮影モードはバルブにします。それ以外だとアストロトレーサーのメニューに潜れません。
・O-GPS1の青いランプが点灯したら、アストロトレーサーのメニューから、精密キャリブレーションを実行。

↑
するとこのような指示が出ます。正確な位置情報を把握するための校正ですが、この動作だとなかなかキャリブレーションが成功しません。(リコーのページに参考動画あり)ここでつまずくと、やる気をなくしかねません。
どこかのサイトで見つけた方法なのですが、手にカメラを持ち、体の前で大きく∞の字を描くように回すと、割とすぐに成功します。望遠レンズを付けていたら若干辛いではありますが^^;
精密キャリブレーション成功

これでアストロトレーサーの準備はOKです。
それではいよいよ撮影開始
①三脚にカメラをセット・・・三脚の使い方として、なるべく低い重心をとったほうが安定します。脚を3、4段伸ばせたとしても、太いほうの1段だけ伸ばすなどしたほうがいいでしょう。センターポールも伸ばさないほうがブレを少なくできます。
②ピント合わせ・・・とても大事な作業です。星はすぐには移動しないので、マニュアルでしっかりピント合わせしましょう。非常に暗いので、ファインダーは使いません。ライブビュー画面にして、できるところまで拡大します。なるべく明るい星を真ん中に入れるようにしたらいいでしょう。その状態でピントリングを回し、星の像が最も小さくなるところに調整します。
③設定・・・これは状況によるので一概には言えませんが、目安として。
広角~標準:星空を広い画角に収める場合(換算80mmくらいまで)、そこまでブレや星の流れにシビアになる必要はありません。ノイズの少ない写真を撮るために、ISO感度は低めに(~500程度)設定し、絞りは開放付近で。追尾時間は3分程度なら十分追尾します。
望遠:換算200mmを超えるような望遠になるとブレも気になり始め、追尾も厳しくなります。長時間露光が難しくなるので、思い切って感度を上げて(4000~)、絞りは開放付近で撮りましょう。追尾時間は20秒程度で撮ってみて、ブレや星の流れがなければ時間を延ばし、あれば短くします。何枚が撮ってみて、いいバランスを見つけましょう。
絞りとISO感度を設定したら、露光時間はアストロトレーサーのメニューにタイマーがあるので、ここで設定します。追尾可能時間は最大で5分ですが、方角、焦点距離によって大きく変わります。DA★300mmでオリオン大星雲を撮ったときには、1分50秒までになったりしました。超望遠でそこまで開けないのでいいんですが(^^;望遠:換算200mmを超えるような望遠になるとブレも気になり始め、追尾も厳しくなります。長時間露光が難しくなるので、思い切って感度を上げて(4000~)、絞りは開放付近で撮りましょう。追尾時間は20秒程度で撮ってみて、ブレや星の流れがなければ時間を延ばし、あれば短くします。何枚が撮ってみて、いいバランスを見つけましょう。
④撮影開始

タイマーを設定し、撮影開始を押すとこの画面になります。あとはシャッターを切れば撮影を開始し、設定時間になったら終了します。レリーズがあれば、シャッターを押し込むときのブレを防げます。なければセルフタイマー2秒などを使うといいでしょう。ミラーアップ撮影をすれば、ミラーショックのブレも排除できます。そのあたりは試行錯誤を繰り返して、許容できるラインを見極めましょう。
-------作例------------------
実際にアストロトレーサーを使用して撮影した写真をあげます。
撮影情報をともに載せるので、参考にしてください。
・K-5Ⅱs + DA★300mm
オリオン大星雲
F値:4 露光時間:15秒 ISO感度:4000

星が点としてピタッと止まっています。
300mmという望遠域で撮るようになって、アストロトレーサーの威力をより感じるようになりました。
10秒程度なら流しても大丈夫じゃ?と思って、アストロトレーサーを使わずに撮ってみた写真がこちらです。
F値:4 露光時間:11秒 ISO感度:2500 アストロトレーサー未使用

11秒でこれだけ流れてしまいます。全く点ではありませんね。
超望遠で止めて撮るには、なんらかの方法で追尾することが必須です。
アンドロメダ銀河
F値:4 露光時間:10秒 ISO感度:6400

前回の記事でも紹介したアンドロメダ銀河ですが、淡い天体でも感度を上げてやればしっかり写ります。
プレアデス星団
F値:4 露光時間:15秒 ISO感度:6400

同じくISO6400で。プレアデス星団の青白いガスもうっすら写ります。
オリオン座三つ星付近
F値:4.5 露光時間:20秒 ISO感度:2000

干潟星雲
F値:4 露光時間:30秒 ISO感度:2500

・K-5Ⅱs + sigma18-250mm
天の川
F値:3.5 露光時間:120秒 ISO感度:1000 焦点距離:18mm

広角域での撮影では、追尾可能時間も長くなります。
F値:4 露光時間:270秒 ISO感度:320 焦点距離:18mm

さらに露光時間を延ばし、感度を下げてやると、ノイズの少ない繊細な写真を撮ることができます。ただし、この写真を見てもわかりますが、広角で長時間露光した場合、周辺の星は追尾しきれず流れてしまいます。露光時間を短くすれば軽減されますが(この写真は4分30秒)、この流れをどう捉えるかですね。
いかがでしょうか。広角での流れ、追尾の精度など、天文用の道具には敵わないところもあるかと思います。しかし、ホットシューに取り付けてグルグル振り回すだけの手軽な装備、セッティングでこれだけの写真が撮れてしまうのは驚きです。ペンタックスユーザーにはおすすめです。
星撮りに挑戦される方は是非(^^)

撮影した天体ごとの記事は以下のカテゴリにまとめています。オリオン大星雲を撮るのに試行錯誤した様子もまとめているので、よろしければご覧ください。
→天体写真カテゴリ
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